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ビッコミさんの作品:浅野いにおが語る、漫画の「今」

浅野いにおが語る、漫画の「今」

 

取材・ライティング:平岩真輔

 

 

アイコンをキャラデザした時、浅野いにおが考えたこと

ビッコミ  「ビッコミ」がローンチ(2023年5月30日)から1年を迎えました。ありがたいことに、この1年で新人作家さんの読切がたくさんの方に読まれたり、新連載がいきなりSNSで話題になったりと、読者の皆さんと新しい漫画との出会いがビッコミから生まれていることが嬉しいです。
浅野いにおさんにはビッコミの立ち上げ時から多々のサポートをしていただきました。漫画をとりまく状況が変化するなかで、浅野さんのように様々な表現手段を持つ方がどのようなことを考えて創作活動を続けておられるのか。浅野さんの今の感覚を伝えることで、読者の方々はもちろん、漫画家さんたちにもあらためて漫画の魅力を伝えられたら、と思います。

平岩  まず「ビッコミ」との関わりについていうと、浅野さんがビッコミのキャラクターをデザインされたんですよね。

浅野  最初に話があった時は何も決まっていなくて。「浅野さんの絵で」みたいな感じだったんですけど、僕だったらマスコットキャラクターのほうが入りやすいなと思ったので、シンプルな方向性でどうですか?と提案して。身近な存在になってほしいというオーダーから、動物にする?みたいな打ち合わせで、黒猫になりました。黒猫はそんなにキャラに使われてないし、みたいな(笑)。

平岩  メガネの部分がビッコミの「B」になっていますよね。

浅野  一応そこはキャラ的な感じでやったんですよね。なんか勘違いしていて、最初はメガネがB、鼻がI、口をCにして、バッチリだと思ってたんですけれど、「ビック」じゃなくて「ビッグ」なんですよね。自分で気が付いてこっそり直しました…。

 

※感情や状況をビッコミからお伝えして、ネコのポーズも浅野さんに1カットずつご考案いただいた。

 

平岩  キャラクターに名前はあるんですか?

ビッコミ  「みんな、好きに呼んで」という感じで、つけてないんです。

浅野  名前を決めちゃうと、どうしても性別が出ちゃう感じがあるのが難しくて。そこは別に必要ないでしょってことで、あくまで目印になるような覚えやすいキャラクターを作ろうと思いました。僕にキャラクターを発注してもらったことはすごく嬉しかったけど、僕であることが認識されなくてもいいなと思ったので。自分の絵のことは忘れて、Suicaのペンギンのキャラクターみたいな受け入れやすさを目指したんですよね。

ビッコミ  ネコの立ち姿がいかにも小学館の青年誌漫画っぽくて。キャラクターの絵を見た関係者一同、一言目に「さすが!」と言ってました(笑)

平岩  浅野さんは普段「ビッコミ」で漫画をご覧になっていますか?

浅野  自分自身が関わっておいて申し訳ないですが、僕自身は収集癖の人だからライブラリが充実しているのが好きで、あまり漫画をレンタルして読む習慣がないんですよ(ビッコミはレンタルサイト)。お金を使いたい時にまとめて何かを買ったりすることが多いんですけれど、それだと読もうと思った時にはレンタル期限が終わっていたりするので、なかなか利用頻度が高くならないっていう…。

ビッコミ  申し訳なくないですよ! 我々もこのサイトで儲けるぞ、とは思っていなくて。最近は書店やコンビニでどこでも気軽に漫画雑誌を買える状況ではなくなってしまったので、ビッコミで無料話を読んで面白かったら単行本を買っていただく、という入り口を作りたいんですよね。でもその一方、最新話を追ってくださったり、1話ずつ手軽に読みたい方もいらっしゃるので、その課金では作家さんへの収益が発生します。読者の方それぞれの利便性で使ってほしいサイトです。

浅野  そうですね。アプリだとそのアプリを使ってる人しか読めないので、こういうWEBサービスは必要ですよね。昨年の『おやすみプンプン』キャンペーンもビッコミで1日限り全話無料キャンペーンをしていたから誰でも読めたわけで。ああいう使い方をすると認知が広がるなっていう実感がすごくありました。

 

『おやすみプンプン』キャンペーンの衝撃!?

ビッコミ  『おやすみプンプン』の七夕キャンペーンは本当に衝撃的でした(笑)。何度も何度もサーバを増強しまくったのが今ではよい思い出です。ダッシュボードでこの1年間のグラフを見ると、『プンプン』の時のユーザー数がすごすぎる…(笑)。見ますか?

浅野  わ、すごいですね(笑)。想像の100倍くらいの勢いでしたよね。最初は1日限定で、13巻分を読み切れるか?無茶ぶり企画に挑もう!というのがスタートだったと思うんですけど、0時にキャンペーンを始めてすぐ夜中にサーバが落ちて「読めねえじゃん!」みたいになって…。七夕が金曜日だったので、土日まるごと延長でいいんじゃない?と僕が言って、結果的にそれで読んでくれる人も増えたという。怪我の功名みたいなところも含めてうまい具合に回ってくれたので、こういう盛り上がりを自分でコントロールできる感じは全然ないですね。

 

※2023年7月7日(金)0時からのキャンペーンで夜中にサーバが何度も落ち、その後、朝8時に出したキャンペーン延長告知。画像のデザインが間に合わないので、担当者がスマホ上で修正情報を記載した突貫工事の情報出しでした( 当時の投稿 )。

 

ビッコミ  読んだ方がSNSで感想を共有することでどんどん広がっていって、海外の読者の方も拡散してくださったので、あの時期は色々な言語でファンレターが届きました。キャンペーン後には電子ストアでの『プンプン』売上が伸びて、紙の単行本にも重版がかかったんですよ。

浅野  ああ、そうでしたね。過去作をあらためて宣伝できるという意味でも、ビッコミみたいなプラットフォームは必要だなって思いますね。

平岩  限られた時間でみんなが同時に読むことで、お祭り的に盛り上がる感じも良かったですね。

浅野  サーバが落ちる度に、読者と一緒にトラブル対応を見守るみたいなのも含めて面白かったですし。この経験がデータとして生かせるといいんだけど、ちょっと聞いた話では、あの時だけ異常な数字が出ちゃったせいで、ビッコミの目標値の設定を変えざるをえなかったとか(笑)。


ビッコミ  そうなんですよ!(笑) 目標値を一瞬で突き抜けてしまったので上方修正しなければならない、という嬉しい悲鳴でした。WEBの同時性を活かして、読者の方々が「作家さんと一緒に面白いイベントができた!」と喜んでくれることが大切で。ビッコミはその思い出作りの一助になれたらいいなと思っているので、浅野さん発案の七夕キャンペーンで一緒に大きな話題を作ることができたことも嬉しかったです。

 

※『プンプン』キャンペーンが大きな話題になったため、ビッコミで読者プレゼント企画をおこなった。

 

「漫画」というメディアを選ぶ理由

平岩  今や電子書籍で漫画を読むことがあたりまえになっていて、ネットで発表される漫画の形も様々です。浅野さんは縦スクロールのウェブトゥーンを読まれますか?

浅野  ほとんど読まないんですよね。見開きベースで描かれた漫画は縦スクロールでも読めるんですけど、ウェブトゥーン形式は僕には読みづらくて。たぶん僕の漫画を縦にコマを並べても読めると思うんですけど、ウェブトゥーン形式で描かれたものって、その逆はできないじゃないですか。その意味では、見開きベースで作っておいたほうがよいのでは、と感じてます。だから10年くらい前から編集者も縦スクロールをかなり意識するようになっていますが、僕はひとまず静観している状況です。

平岩  自分の描いている漫画とは、別の媒体だという印象ですか?

浅野  読ませるフォーマットの話じゃなくて、ウェブトゥーンはスタジオ制にして供給頻度を高めるのが一番の違いで、大量に投入することで読者を増やすということなんじゃないかって。合理的だとは思うけれど、関わる人間が増えれば増えるほどマイルドになって作家性みたいなものは薄れていくわけで。頑張れば一人でも描けるというのが、日本の漫画の良さで、それ故に尖った作品を作れるのが最大のメリットだと思うんですよね。だから縦とか横とかはどちらでもよくて、作家性の高いものを読みたいのか、高頻度かつ大量供給されるものを読みたいのかということだと思っているんですよね。

平岩  確かに、読者からすればフォーマット云々ではなく、面白い作品を楽しめるかどうかが大事ですからね。

浅野  『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』でアニメ制作の現場を体験したんですけれど、もし漫画と同じ労力でアニメが作れるようになったら、これまで漫画家を目指してきた人たちが、はたして漫画を描くのか疑問に思ったんです。漫画じゃないといけない理由を探すのは、けっこう難しいなと感じているんですよね。

平岩  浅野さんは漫画制作に積極的にデジタル技術を取り入れたり、イラストや作詞、ファッションブランドとのコラボ、YouTubeでも配信をしていたり、色々なアプローチのアウトプットをしていますよね。その中で、あえて漫画というメディアを選んで創作活動をしているのはなぜですか?

浅野  すごく乱暴な言い方をすると、漫画って映像と小説の中間にあるメディアだと思うんですよね。中途半端でもあるけど、いいとこ取りもできる。たとえば小説は主人公の心理描写が活字になっているけれど、映画でずっとモノローグを使ったら煩いじゃないですか。でも漫画ならそういう表現もできなくはないので、文学的なものをやりたいなら、漫画が向いていると思う。今描いている『MUJINA INTO THE DEEP』みたいなアクション漫画は、漫画よりアニメのほうがずっと良く見せられると思うんですよ。

平岩  浅野さんみたいに漫画を描くのにBlenderやUnreal Engineを使っていると、制作に使うツール自体はもうアニメやゲームを作っている人達と同じで、アウトプットの結果が違うだけだったりしますよね。

浅野  そうですね。たしかに、僕が持っている背景の素材やアセットは映像やゲームでも流用可能なものなんです。漫画の原稿ではモノクロになるけど、作っている時はカラーなので別のメディアに展開できる可能性もあると思っています。それでもなぜ漫画を描いているのかと聞かれると、ロマンみたいな話になっちゃうんですけれど、僕はやっぱり「出版」が好きなんですよね。特に小学館は出版社の在り様として、どこか教養というものがベースにあるように感じていて、漫画にしても娯楽一辺倒じゃない付加価値があると認めてくれる気がするので、だから僕はここで描いているみたいな。

ビッコミ  なんという、ありがたいお話です……。

 

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』11集第85話

 

浅野  でも、三大出版社(講談社・集英社・小学館)それぞれに明確なイメージを持っていたりするのは僕らの世代で終わりかな、とも思うんですよね。昭和生まれとしては、そういうロマンがあるから出版に関わりたい。もちろん、絵を描くのが好きだからとか、あまり多くの人と関わらないで仕事ができるのが理想だからといった単純な理由もありますけど。

平岩  CLIP STUDIOやBlenderみたいなデジタルツールも、作家がひとりでアプトプットできるスピードや物量を後押ししてきたようなところがあるから、その理想は納得です(笑)。新しい技術やツールを取り入れようとして、逆に振り回されてしまうようなことはないんですか?

浅野  デジタルとの付き合い方の問題で、基本的にはツールなので僕は道具以上のものは求めていないんです。だから、画像生成AIで「理想のプロンプトを入れて作品全部を出力しました」みたいなやり方をすることは絶対にないと思う。ただ僕は早くから写真を素材に漫画の背景を作ったり、いろんなデジタルツールを漫画に活用してきた人間なので、漫画におけるAIの可能性については以前から考えていたんです。

平岩  画像生成AIについては、漫画業界でもいろいろな意見がありますよね。

浅野  やはりまだAIには種々の問題点がある一方で、どんどん技術進化を遂げているので、今後そういった技術があることを前提としたうえで、漫画とAIがどのように付き合っていくべきかという議論が重要なのではないかな、と。ちなみに僕は、この先AIが普及すればするほど、作家性が重要な時代が戻ってくるように思います。

 

時代の空気の感じ方と「作家性」

平岩  ビッコミでバズった読切作品を見ると、読者が作家性の強いものに惹かれているように感じます。

 

『MUJINA INTO THE DEEP』1集EPISODE_1-2

 

浅野  いい意味で空気を読まないものが求められていると思いますね。どこか破壊的なものがウケているようにも見えるので、この間まで1980年代リバイバルだったのが90年代になって、エンタメ的にも世相的にも世紀末みたいな感じなのかなって。連載中の『MUJINA』でもあえて乱暴で品のない感じを意識しています。僕は90年代後半がドンピシャで青春時代なので、その空気感はよくわかります。『デデデデ』を描いていた2010年代はなるべく下品なことをしないように意識していたんですけれど、この数年で僕自身もガラッとモードが変わりました。

ビッコミ  そういう空気感はどこから嗅ぎ取っているんですか?

浅野  Yahoo!のリアルタイム検索で、X(Twitter)のトレンドに上がる「ワード」を24時間見ています。それだけです(笑)。でもそれで世の中で話題になっているワードはほぼ全て目にしている状態になるので、そこから気になるワードを追っかけていけばだいたいの概要は把握できるんですよね。昼間はアプリのアップデート関連が多くて、夜はテレビ番組とか相変わらず野球が人気っていう感じ。そういう全体のすごく大まかな流れはそこで見て感じて、個別のディティールは気になったものを掘っていくっていう感じです。

ビッコミ  そうか、トレンドのワードを見てるんですね。しかも24時間!(笑) 『デデデデ』の女の子同士の可愛い会話や、『MUJINA』の猥雑な感じなど、浅野さんが描くキャラのセリフや言葉のセンスは、いつも時代にジャストフィットしていますよね。そういうセリフを書くために意識していることってありますか?

浅野  セリフって勉強するわけでもないのに、なぜか書けるんですよね。なんでテレビを見ないのにニュースを読み上げるシーンとか政治家の演説シーンのセリフを書けるんだろうと思うんですけど、たぶんYouTubeでそういうのを聴いているからなんですよね。『デデデデ』は可愛いのに加えて、ネットスラングに振り回される若者みたいな感じでセリフを書いていたんですけど、『MUJINA』は比較的おっさんの感性で、普段の自分に近い取りつくろわない言語感覚でやっています。自分が今の時代性を反映すると、こういう感じになるかなっていう。

ビッコミ  なるほど、SNSやYouTubeから吸収しているんですね。

 

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』3集第20話

 

浅野  でも、最近流行っている漫画の中でタバコを吸っているシーンがよく出てくるんですけど、今はタバコって世間一般的には嫌われているじゃないですか。ネット上だと喫煙者にすごく当たりが強いけど、大学生とかは意外と吸ってたりするんですよね。ローカルにはネットで言われている絵空事とは違う雰囲気があって、そういうのが漫画にも表れてきている気がします。ネットはネット、みたいにみんな少し目が覚めてきたということかな、と。

平岩  SNSのタイムラインも自分で作っているので、ネットで目にするものって広いようで狭かったりしますよね。

浅野  エコーチェンバー現象というか視野の狭い世界に個々人がいることが常識化したから、ネットに書かれていないことが重要だよね、という空気になってきた気がしますね。徹底して自分の好きなものだけを目にして描くという漫画の作り方もあると思うんですけれど、リアルを求めるならば自分にとって不快指数の高いものも、なるべくフラットに見ないといけないなと思っています。

平岩  明らかに自分とは感性が違うだろうインフルエンサーとか、迷惑系YouTuberみたいな人や、そのフォロワー同士のやりとりを見ると、ものの考え方から言葉使いまで何もかも別世界だったりしますからね……。

 

浅野いにおはなぜ嫌われるのか?

浅野  そういえば、最近ようやく言語化できたんですよ。僕は自分をオタクではないという認識があるんですけど、サブカルと言われても自分はそんなにサブカルの世界にくわしくないしな……という中途半端な感じがあるんです。オタクは基本的に積み上げてきた歴史の縦軸を重視するけど、サブカルはその瞬間の横軸を広くとらえる感じ。サブカル作家は10年もたないことが多くて、その時代のカルチャーを横断的に捕まえることはできるんだけど、本人が変わらないままだと時代遅れになっちゃうんです。僕は20年くらい漫画家をやれているので長生きしているほうなんだけど、それは僕がすごく軽薄な奴で、好きなものやモードが10年位ごとに全部入れ替わってるからなんですよ。だから、オタクからもサブカルからも嫌われるんだと思う(笑)。

平岩・ビッコミ  (爆笑)

浅野  漫画家として長生きするにはこのやり方しかなかったんです。さっき自分が作詞をやったという話もあったと思いますけど、やっぱり僕は漫画家だから漫画しか描けない。でも自分の漫画が本来ならクロスしない文化のハブになっている感覚があって。『ソラニン』はあのとき一番輝いていた宮﨑あおいさんが主演してくれて、アジカンの後藤正文さんが曲を作ってくれて、おふたりが作品の中でクロスしていくような感じがしました。『デデデデ』で幾田りらさんとあのちゃんが最高のコラボレーションをしてくれたのも、作品というハブがあったからだと思うので……。でもこのプロジェクトが終わったら、みんな解散する。そして二度と関わらない可能性もあるんですよ。ただ、それでいいんです。僕は、この交わらないはずのものがクロスする瞬間がいいと思っているわけで。僕自身がそういう文化の楽しみ方をしていることに気がついて、それでようやく言語化できたんですよね、自分がなぜ嫌われるのかっていうことが(笑)。

 

※2024年「週刊ビッグコミックスピリッツ」2・3合併号 アニメ化キャスト発表 描き下ろしイラスト

 

平岩  浅野さんがデビューした当時は、オタクVSサブカルみたいな空気感ですごくバチバチしていた時代でしたけれど、最近はもうそういう対立構造もなくなっている気がします。

浅野  ゼロ年代前半にデビューして、作家として独り立ちできるようになったのが2010年前後なんですよ。でもその頃には僕が好きだったサブカル作家たちはみんなセミリタイア状態で、結果的に90年代のサブカル思想を受け継いだ僕が最若手としてオタクVSサブカル戦争の恨みを引き受けるサンドバッグみたいになった気がするんですけど、今はそういう意味での対立はぜんぜん感じないですよね。あるとしても昔話みたいなもので。

平岩  みんな歳をとると昔の話をしてしまいがちですけれど、若い頃に村を焼かれた恨みはずっと消えないんですよね……(笑)。

浅野  今の若い作家たちには関係のない話なので、そんなことは気にせず好きな物をのびのび描いたらいいと思います。オタク系のイラストレーターにも凄い人がいっぱいいるんですけれど、自分が90年代に感じていた印象とは違うんですよね。絵柄的にはあの頃と同じベクトルでも、どこか精神性が違うんだと思っています。若い人が新しい感性で作る感じは、いいなあと思いますね。

平岩  今の若いイラストレーターはすごく絵が上手いんですけれど、話してみるとみんなオタク的な物とサブカル的な物を分け隔てなくフラットに楽しんできている世代なんですよね。

浅野  僕はイラストレーター文化にあまり慣れ親しんでいないので、絵柄の違いまで見分けるのは難しいんですけれど、若い人の絵が急激に上手くなったのはおそらく『DEATH NOTE』以降ではないかなと思っていて。小畑健さんが、ああいう端正なキャラクターの描き方の答えを出したことでみんなの上達速度も上がったかわりに、同じフォーマットで描くことでどうしても近い絵柄になってしまう。ただ、これがアニメの普及にも一役買っていて、やっぱりキャラクターデザインがある程度規格化されれば、みんな描きやすくなるじゃないですか。クオリティの高いアニメーションも、その絵柄を既に知ってる人が多いから作りやすくなるという側面はあったと思うんですよね。だから今の漫画文化やアニメ文化というものがこれだけ普及した理由には、作りやすさと見やすさが規格化されたこともあるんだろうなと感じています。

平岩  ずっと追っていると個性や絵柄の違いは見えてくるんですけれど、あるジャンルのすごく狭い範囲の中で、わずかな差異を出すことでしのぎを削っているような感覚はありますね。

浅野  『デデデデ』の絵柄に抵抗があるっていう人が少なくないのは、やっぱり独自路線の絵を描いているから、まず絵に慣れること自体がハードルだったりするんだろうなと。僕が好きな漫画家の松本大洋さんや望月ミネタロウさんの絵だって、最初に見た時は何が描いてあるかを認識できない可能性はあって。これは何が描いてあるの?みたいなところから始めるのはやっぱり参入障壁にはなるので、広く普及するには向いていないなと思う。でもそこは表裏一体で、汎用性を高めれば高めるほど読みやすくなるかわりに消費もされやすいので、作家として何を選ぶのかは難しいところですよね。再現性の高さは置き換えやすさにもつながりますし。

 

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』2集第9話

 

新人作家にとって最も大切なこと

ビッコミ  でも、若い作家が自覚的に選択するのはとても難しくないですか? とがった作家性を磨くのも難しいけれど、ワールドワイドのコンテンツを作るのも自分でその結果を定められるわけではないので……。後からやっぱり違う方向を目指したかった、となっても軌道修正はなかなか難しいですよね。

浅野  うん、難しいですよね。

ビッコミ  浅野さんはご自身を軽薄だといわれましたけど、時代を深く取材して漫画を描いているから、少し前に描いた『デデデデ』のアニメが2024年に公開されると、気持ち悪いくらい今の社会状況と合致していますよね。だからやっぱり時代を観察しつつ、ちゃんと独自性も出すというのが長く創作を続ける秘訣なのではと。

浅野  そうだとは思います。

ビッコミ  漫画ってサービスだから、読まれて完結するものですもんね。

浅野  そうですね、サービスっていう側面は強いです。僕はある意味ではっきりとした趣味がなかったから、どんどん変わってこられたんだと思うんですけれど、今の若い人は自分の趣味を大事にしていて好みもはっきりしているから途中で軌道修正はしづらいかもしれない。ただ、あまり同じものにこだわりすぎると、時代遅れになる可能性はあって。小学館の新人コミック大賞の審査を長くしていて今回ハッキリと感じたのは、以前はよく「僕や花沢健吾さん、押見修造さんに憧れている新人が多いですよ」と言われて応募作品からもそういう傾向を感じていたんです。でも、最近は明らかに風向きが変わって、体感で3~4割くらいはもう藤本タツキさんなんですよ。「ジャンプ+」の新人作家がかなりの割合で『チェンソーマン』の影響を受けているという話を聞いて当然そうなるだろうと思っていたんですけれど、そりゃ青年誌畑にもその波がくるよね、と。しかも実際その新人作家の作品が漫画として面白いかどうかでいうと、面白いんですよ。絵柄やノリは真似ているけれど、つまりそれは今ウケる絵柄を自覚的に取り入れているわけなので、話の作り方も上手いんですよね。

ビッコミ  なるほど。ただなんとなく流行っている作品を真似るのではなくて、読む相手が求める絵柄を意識して漫画を描くということですね。

浅野  だから新人作家にとっては流行を追いかけるという感覚はすごく大事なんですよね。デビューしたら絶対に揉まれるので、その中で自分を見つけていけばいいと思うし、僕自身もデビュー作は誰かのパクリみたいな漫画でしたから。『闇金ウシジマくん』の真鍋昌平さんだって、デビュー当時は松本大洋さんみたいな絵だなと思ったんですよ(笑)。でも今の真鍋さんの漫画を読んで、松本大洋さんを思い浮かべる人はいないじゃないですか。スタートが同じでも、向いている方向で枝分かれして別物になっていくので、その時イケている絵柄を参照するのは悪いことじゃない。それを選ぶセンスがあるっていうことだというのが、この前の新人コミック大賞の審査でよくわかりました。

平岩  極端な話、連載をすれば絵はどんどん洗練されていくと思うので、ものすごく絵が上手くないと漫画家になれないというわけじゃないんですよね。

浅野  一番重要なのはネームのセンスですね。技術的なものは教えられるんですけれど、センスだけは伝えられないので。だから編集者が新人のセンスを見極めて、どこまでブーストさせられるかということが大切だと思うんです。絵は後からでいい。

 

※『MUJINA INTO THE DEEP』1集カバー画

 

1作品前の漫画が一番つまらない


平岩  絵が上手くなるには、やみくもに描くだけではなくどれだけ客観性をもって自分の描いたものを見られるかが大切だといいますよね。その結果を次に反映していく作業の繰り返しが、上達への最短ルートなんじゃないかと思っています。

浅野  絵に関しては本当にそうで、直近で描いたものが一番下手に見えるっていう状態だと、どんどん上手くなっていくと思います。

ビッコミ  直近に描いた絵が下手だというのは、完成した原稿を雑誌で見たら「なんか違うな」っていう感じですか?

浅野  さすがに描いたばかりの原稿が、ってことはないんですけど、僕の場合は1作品前の漫画が一番つまらないと思っているんですよ。今で言うと『デデデデ』がつまらなくて、『デデデデ』を描いていた時は『プンプン』がつまらないって思っていたから。そのサイクルでずっとやっている感じなので、常に反省点があるから次のものを作れるんだと思ってます。

ビッコミ  ご自身の漫画は読み返しますか?

浅野  僕はけっこう読み返しますね。自分の漫画が好きだから、「面白いな」とか思いながら読みます…はずかしいですけど……(笑)。

ビッコミ  いやいや、全然はずかしくないですよ!(笑) 漫画家さんにはご自身が描いた漫画を面白いと思っててほしいですもん。

浅野  今『デデデデ』を読むと、反省点が多すぎてきついですね。何でこうしちゃったんだろうとか、絵的にもここで1回やる気がなくなっているなとか、めちゃくちゃわかるんですよ。昔は『プンプン』で同じことを感じたんだけど、今になるとよくこんな絵を描いていたな…みたいな感じになっているので、絵に関してはそれが自分にとって健全なやり方ですね。物語は、自分の年齢やその時の感覚も関わってくるので、もうちょっと複雑なんですけど。

平岩  ビッコミ1周年という話から、だいぶ深いテーマになってきました(笑)。

ビッコミ  うん、でも漫画を描いている方はみんな励まされると思います。浅野さんでもそう思いながら絵を描いてるんだ!って。

浅野  最近は漫画家のあり方みたいなものが激変する雰囲気を感じていて、あと3~4年くらいで漫画家がいなくても漫画ができあがる、みたいな時代になってしまう予感がするんですよ。まあ2010年くらいの漫画家の見立てでは、今頃は漫画雑誌は影も形もなくなっているはずだったので、予感が当たるかどうかは全然わからないんですけれど。

ビッコミ  漫画家のあり方の変化は感じますよね。

浅野  うちの若いスタッフを見ていると、BlenderやUnreal Engineなどを普通に使いこなしていて。22歳の子が、僕が一生懸命勉強して習得してきたものを「これくらい当然使いますよね」みたいに言ってくるんですよ。やれる人はそれくらいやっているし、使いこなせたら見たことのない漫画が作れるはずなので、そういう意味ではすごく楽しみなんですよ。あまり保守的にならないでほしいというか。

ビッコミ  保守的というと、子どもの頃からネットがある環境で、SNSで発言したことがウケたり非難されたりするのを日常的に経験していると、ネットの評価を過剰に意識してしまうSNS仕草みたいなものが身についていってしまう気がします。自分のしたい表現よりも、こうしたら「いいね」をもらえるんでしょ、みたいな方向に思考しがちな危険性があるというか……。

浅野  先読み文化だと人に好かれたほうがリスクが少ないので、そういう振る舞いになってしまいますよね。うちのスタッフで「スピリッツ」の月例賞を獲って何度か雑誌に載っている子がいるんですけれど、そういう気遣いをする世代だと思っていたら、SNSのコメントとかもすごく生意気で、煽りまくるんですよ(笑)。聞いてみたら、わざとやっているんですよね。今の20歳くらいの世代だと、もうSNSの気遣いみたいなのを馬鹿馬鹿しく感じていて、逆に煽り散らかしていくみたいな。

ビッコミ  わはは。それはそれで、いいと思います!(笑)。

浅野  描いている漫画もだいぶ生意気なんですけれど、スタンスとしてはそれでいいと僕は思っているので、そう伝えています。こうやって新しい感性が芽吹いてきているんだな、って。

ビッコミ  でもまさしくそれが、ひとりで描ける漫画という表現だからできることじゃないかと。10人で作るものだったら、他の9人がやめたほうがいいと言えば丸くなってしまう可能性もあるわけで。

浅野  そうなんですよ。1人の人間の感情をむき出しのまま表現できるのが、すごくいいなと。工夫して漫画らしい漫画を描くのもいいんですけれど、作家性みたいな部分で考えると、本人の肌感覚みたいなものをそのまま漫画にしてほしいと思うし。出来が悪くても、若い時の感性をちゃんと原稿に定着させておくこと自体に価値があるから、そういうものを見せてほしいという気持ちがあるんですよね。

ビッコミ  今は漫画のジャンルがはっきりしていて売れるジャンルの傾向も見えるので、読者サービスとしてはそういうものが必要だとは思います。でも一方で小学館の青年誌には作家さんの感性がどうすれば読者に刺さるのかを重視する編集者も少なくないので……臆せずにむき出しの感性を表現してほしいと思います。

浅野  若いなら、若い時にこそ描けるものを描いたほうがいいんじゃないかと思う。「ビッコミ」周辺はそういう作品も受け入れてくれるだろうと思うし。

ビッコミ  たしかに、会社の上の人から「電子でウケるものを作れよ」とか言われないですからね。いや、言われていても現場があまり聞いてないのかもしれない(笑)。

浅野  出版社ごとのカラーみたいなものを感じる人は、そういうのがわかってると思いますよ。小学館の人はいまだに良いものを作れば売れると信じている……商売が下手だなあと思います(笑)。

ビッコミ  わはは、本当にそうですね…(笑)。

 

※『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』12集、書店販促用イラスト

 

浅野  時代は巡るので、例えばいかに売れるかというマーケティングが重要な時代がひっくり返って、やっぱり個性の時代だ、ってなる可能性もあるわけですよ。その時にちゃんと小学館の存在意義みたいなものを感じてもらえたら、やりようがあると思っています。僕が新人の頃は、雑誌を買う人が減り始めて「単行本派」みたいな言葉が生まれた時期で。雑誌では読まれていないけれど単行本では売れる、みたいな作品が僕の漫画だったんですよ。今は書店に行って本を探す人が減って、ジャケ買いも存在しなければ電子書籍だとオビのキャッチコピーもつかない、みたいな感じになっているじゃないですか。そうなると雑誌でなくても毎週読めるみたいな、連載力がある人のほうが強いんですよね。

ビッコミ  小学館の青年誌で描かれる作家さんは、音楽とか他ジャンルとのコラボのオファーも多いんですよね。漫画以外のお仕事をするのは大変だと思うけれど、長く読まれ続けるためには作品だけでなく作家さん自身の名前が立っている必要があるので、私たちの作家性重視のスタンスは間違ってはいないと思いたい……。

浅野  そうですね、作品単位で読むのもぜんぜん間違いではないですけれど、今後それがどうなっていくのかなと感じます。今の若い人って、音楽も「このアーティストが好き」みたいな聴き方を、前よりしていない気がするんですよ。曲単位で聴いているから、ライブに行くと知らない曲や聴きたくない曲を聞かされるのが嫌みたいな人も増えているらしくて。10代に人気のあるミュージシャンの話を聞いたら、ボーカロイドっぽい感じの曲を作ってライブをやるとすごくお客さんが集まるらしいんですね。同じ感じの曲でもいいから、とにかく毎週新曲を出すみたいな形でYouTubeに投稿し続けるのがファンを引きつけるための手段になっていて、これは物量の世界だなぁと。

ビッコミ  それが収益につながっているってことですか?

浅野  何億再生とかは行かなくても100万再生くらいはあるので、トータルするとそこそこ稼いでいるっていう。でもそれを止めたとたんにファンも離れてしまいそうですよね。僕はミュージシャンがいちばん世間の消費傾向の影響を受けやすいと思っているので、漫画家の未来もミュージシャンの動向を見れば分かる気がするんですよね。2000年頃に、音楽CDが売れなくなってライブの物販に力を入れ始めたという話を聞いて、グッズが売れるような漫画を描かなければいけないと思ったし、いつまでも単行本が売れる保証もないから、副収入を確保しないといけないと考えていたこともあったので……。めちゃくちゃ突き抜けてしまえば、それこそ好き放題やれるだろうけど、それ以外の人達はかなりサバイバルになるんじゃないかって。

平岩  最近のベテランアーティストなんかを見ると、ずっとファンを続けてくれる人と強固な関係を作って続けていくようなやり方もありますよね。

浅野  C to Cみたいな感じも今はやりやすいから、その方法もあるかなとは思います。メジャー誌でヒット作を描いたけれど後が続かなかった作家が、ネットでファンに向けて手売りみたいなことをして生きていくのも、確かに現代的だなと。

ビッコミ  たしかに、そういう方法もありえますよね。

 

何を「成功」とするのか


浅野  ただこの前、若い漫画家たちの集まりに呼ばれて行ったら、20代の男の子がFANZAで作品を描いてると言っていて。たぶんすごく儲けているんですけれど、「浅野さんは漫画描いてて楽しい時ありますか?」みたいな質問をしてくるんですよ。だから特定の場所でひたすら読者のニーズに答え続けるのは賢いやり方だけれど、漫画家によっては必ずしも自由ではなく、自尊心が満たされない人もいるのかもしれない。漫画家はいわゆるヒーロー的な側面もあると僕は思っていて、そして僕はそこに憧れていたから、うーん、その方法だとヒーローにはなれないよな……って。

平岩  何を成功モデルとするかですよね。今は普通に新人漫画家をやっていても出版ドリームみたいなことはないけれど、そんなに有名でなくてもファンコミュニティサイトみたいなところでめちゃくちゃ儲かっている人もいるじゃないですか。100人が月1万円払ってくれれば確実に月収100万円になるので。

浅野  必ずしも世間の認知度と収入がイコールなわけじゃないので、単純に儲けたいならメジャーな出版社にくる必要はないんですよね。自分がこれほど長く青年誌で描き続けられるのも、やっぱり出版社というものが好きなのと、雑誌や編集部というスタイルがこれまで築いてきた漫画の歴史の中に自分が組み込まれる喜びがあるからだと思うので。

ビッコミ  漫画を連載するのって、はてしなく地道な作業の連続ですもんね。

浅野  そうなんですよね。漫画を描いて確実に儲かるなら、みんなやっているはずなので。なぜ漫画家に東大卒が少ないのかを考えれば、理論で儲かる業界ではないということが分かってもらえるかなと(笑)。だからある程度、ロマンとか美学みたいなものは必要かなって……。

 

『MUJINA INTO THE DEEP』1集EPISODE_0-1

 

平岩  そんな状況の中で、あえて漫画を描いて生きていきたい人がサバイブしていくには、どうすればいいんですかね…?

浅野  僕が新人賞の審査で言ってるのは、同時代性ですね。それは内容的な部分だけでなくツール的な部分や読者のニーズみたいなところも含めて、トータルでそういう時代の感覚が必要だと思うんですよね。その一方で、漫画の歴史の中で積み重ねてきた文化に乗っかって作品を描いていく方法もあると思うので、必ずしも全員がパーソナルな部分を漫画に出す必要はないんですよね。ただ、僕の予想では今後さらに作家性とか、その人のナマの部分が重要視されるようになっていくはずだから、そういうものを意識して漫画を描くようにすれば、道筋も見えやすくなるんじゃないかなって。

平岩  とはいえ、新人さんがデビューするまでにネームが通らず苦しい思いをする期間とかもあるじゃないですか。そんな時にたまたま見ていたYouTubeで5万円の赤スパが飛んでいたりすると、自分のやっていることが空しく感じてしまったりすることもあるんじゃないかと…。

浅野  でもそれは漫画に対してのスーパーチャットじゃないじゃないですか。そこに対抗意識を燃やしたところで絶対に同じ稼ぎ方はできないわけだから、あまり気にしないほうがいいですよね。

平岩  苦しい思いをして連載を勝ち取るより、SNSでバズるのを狙ったり、特定のファンに向けて有料でイラストを描いたほうが幸せになれるんじゃないか……みたいな迷いはあると思うんですよね。

浅野  それで満足感を得られるなら悪くないし、自分に向いているなら絶対にそれをやるべきだと思います。読者と直結した活動で得られるものもあれば、出版社を通すことで初めてできることもあるので、自分がどういう漫画家になりたいのか着地点をイメージすることで、おのずと選択肢も決まってくると思います。もちろん、誰もがやりたい方向性で成功できるのが一番なんですけれど、売れる売れないは本当に時の運なので、なんとも言えないですよ……。僕のまわりの漫画家はみんな知り合ってから20年くらい経ってますけれど、それくらい続けていると、みんな1回くらいは売れるんです。だからまずそれだけ続けられる時点で、漫画を描く才能があるってことなんじゃないですかね。

ビッコミ  描き続けることが一番大変ですよね…。

浅野  その時点で能力があることは確定してるんですよ。あとは20年のうちに1回はある「日が当たるタイミング」を待つ感じですかね。今の新人がきついと思うのは、Webやアプリで連載枠が増えたことで、連載までのハードル自体が昔より下がっていることなんですよ。1作目の評価が、その漫画家が売れるか売れないかというある程度の指標になってしまうので。2作目は失敗できないので、編集者もヒットの確度を上げていきましょう、となりますよね?

ビッコミ  次は単行本の部数を伸ばしましょう、となりますね。

浅野  そうなると連載のハードルも上がってしまうので。だから僕はむしろ2作目が一番つらいと思ってる。

ビッコミ  2作目の連載は、1作目から間を空けずに始めたほうがいいですか?

浅野  勢いがあるうちにやったほうがいいと思います。逆に言うと初連載というのは、のびのびやるのがいいと思う。自分が自由にやったらどうなるのか、無理をしたらどこまでできるのかっていう、自分の中の振り幅みたいなものを知っておいたほうがいいので。それがわからないと、手が抜けなくなるので連載のペースも計算できなくなっちゃうから。そういうのは若いうちにやっておくべきだと思いますね。

ビッコミ  本当に、新人さんたちに楽しくのびのび描いてほしいですね。

平岩  なんてためになる話なんだ……!

 

※『MUJINA INTO THE DEEP』1集、書店販促用イラスト

 

浅野  正直、どこの出版社でも自分の好きなところでやればいいんだけど、「ビッコミ」みたいに作家性むき出しの作品を受け入れてくれるサイトもありますよ、ってことを覚えておいてもらえるといいのかなと……。

ビッコミ  浅野さん、ビッコミの宣伝隊長のようです……。すごくいろいろなトピックについて語っていただきまして、本当にありがとうございます!

 

(2024年6月5日)

 

 

 

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10日前