40周年を迎えた、三和酒類株式会社の本格麦焼酎「いいちこ」の駅貼りポスター。1984年からアートディレクターの河北秀也氏が手がけてきたポスターの総制作数は500枚にのぼる。郷愁と予感に満ちたポスターに目をとめたことがある人も多いはず。
「いいちこ駅貼りポスター」の世界観をショートアニメーションで表現した『iichiko story』第4弾が6月26日に発表された。「iichiko story ep.4『思いはどこへ駆けていく』」ではキャラクター原案に漫画家・ゆうきまさみ氏を起用。
『iichiko story』の企画を担当した日本ベリエールアートセンターのプロデューサー 稲田里樹氏、クリエイティブディレクター 久力健志氏に、ゆうき氏を起用した理由を聞いてみた。
「iichiko story ep.4『思いはどこへ駆けていく』」では「伝承」をテーマに、都会で働いていた主人公が、田舎で大工をしていた祖父から大切なものを受け継ぎ、新たな一歩を踏み出す物語が描かれる。
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取材・ライティング/川俣綾加 協力/平岩真輔
ゆうきまさみキャラクターはそれだけで個性を出せる
──どなたが最初にゆうきまさみさんのお名前を挙げたのでしょうか?
稲田里樹(以下、稲田) まず弊社でシナリオを担当して、ある程度キャラクターのイメージが固まった段階で、誰にキャラクターをつくってほしいかチームで相談したところ、ゆうきさんのお名前が挙がりました。
久力健志(以下、久力) 「いいちこ」のメインユーザーから、もう少し若い世代にまで訴求したいという思いがあり、幅広い世代にアピールできる方にお願いしたいなと。 そこで、長年第一線で活躍されてきたゆうきさんに声をおかけしてみようと、稲田と意気投合しました。
物語に登場するいいちこ駅貼りポスター「思いはどこへ駆けていく。」(2004年7月掲出)
──初めて読んだゆうき作品を教えてください。
稲田 最初に読んだのが『機動警察パトレイバー』で、「特車二課」のキャラクターがずっと頭の中に残っていました。後藤隊長は僕の理想の上司で、ずっとその想いがありました。
久力 小学生の頃、年上のいとこに「これを読んでみろ!」と渡されたのが『究極超人あ〜る』でした。それまで小学生や中学生が主人公の漫画ばかりを読んでいたので、高校生が主人公の『あ〜る』は大人っぽい掛け合いが多くて、都会の香りがしたのを覚えています。また、僕自身でも漫画を描いていたので、サングラスの光の反射や、さんごの髪のハイライトなど、漫画の技法をたくさん学びました。
──ゆうきさんの描くキャラクターの魅力をどう感じていますか?
久力 キャラクターの明るさですね。喜怒哀楽がはっきりしていて、ゆうきさんの描くキャラクターはそこにいるだけで目が吸い寄せられるし、明るく楽しい気持ちになれます。これまでと違ったアニメーションにできるのではと思いました。
家族の幸せがつまったアニメーションになった
──シナリオを読んだゆうきさんはどんな反応でしたか?
稲田 まず「う〜ん」と…(笑)。
──怖い! どういう意味の「う~ん」だったのか…(笑)。
稲田 恐る恐る感想をうかがうと、いきなり「この主人公は女性にしたほうが面白いんじゃないですか」と。
企画初期に描かれた主人公の環のキャラクター原案のラフ案。右は幻の男性バージョン主人公。
──それは作品の根本からガラッと変わるようなご意見ですね。
稲田 設定段階からずっと環を男性として進めてきたので、びっくりしました(笑)。
久力 たしかに女性が主人公のほうが、ゆうきさんのキャラクターが輝くのではと思ったので、「そっちのほうがいい!」と興奮しましたね。
稲田 大慌てで、三和酒類さんにも確認をしてシナリオを修正したのですが、今こうして完成したものを見ると、ゆうきさんに意見をいただいたことですごく良くなったと思います。もし次があるなら、ぜひストーリーを書くところからゆうきさんにお願したいですね。
──主人公の三田村 環、祖父の環一、環の母 文江のキャラクター原案を見ていかがでしたか?
環は、髪型や雰囲気、目の強さなどの細かな調整が行われた。
稲田 環は、ショートヘアの女性のイメージが頭の中にあったので、髪を後ろで束ねていたのが新鮮でした。
久力 すごく大人っぽい雰囲気のパターン、少女っぽさのあるパターン、明るい感じのパターンと3種類のキャラクター原案を頂戴して、明るい感じの環を選びました。ゆうきさんらしい、砕けたギャグっぽい表情や、遊び心を感じる表情もいただけて、とても魅力的だなと思いました。ゆうきさんのキャラクターの横顔で口がとがっている部分、あれが本当に大好きなのでそれを、本作でも描いていただけて嬉しかったです。
祖父の環一と母の文江。完成しているストーリーに対してキャラクター原案を考えるのは、ゆうき氏にとって初の試み
稲田 僕の中で、環一は完全にパトレイバーのおやっさん(榊 清太郎)です。環一役の声優・大塚芳忠さんも大工の息子さんとのことで、ストーリーに共感できると喜んでくださいました。
──第4弾のショートアニメーションムービーでお気に入りはどこですか?
久力 食事のシーンです。環一が楽しそうにグラスに注がれたお酒を揺らして飲み、それを見つめる環の表情、見守るお母さん。家族間の信頼感とつながり、小さな幸せがつまっています。
稲田 環が電車に乗って海を眺めている最初のシーンが好きですね。環の心情を表現している部分だと思っています。テーマソングを担当したササノマリイさんもこのシーンをジャケットイラストに選んでくれました。
──このインタビューが公開される頃には、映像を見たみなさんからの感想も届いていると思います。今の心境は?
久力 ゆうきさんをはじめ、協力してくださった皆さまのおかげで、こだわりが詰まった魅力的なアニメーションになったと思います。ぜひ、沢山の方にご覧いただきたいです。
稲田 シナリオを作って、ゆうきさんと一緒にアニメーションを作れて、僕らもとても楽しかったです。このわくわく感がみなさんにも届いていると嬉しいです。
職場の仲間も個性豊か。モブのキャラクターは、ゆうき氏がメインキャラクターを考える過程で自発的に描いたもの。
映像では見えなかった中学生のモブ少年は、実はこんな顔!
iichiko story ep.4「思いはどこへ駆けていく」特設サイト
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