

第96回新人コミック大賞(青年部門)に、たくさんのご応募ありがとうございました!!厳正な審査の結果、大賞1作、入選1作、佳作3作が選ばれました。
受賞者の皆様おめでとうございます!!
該当誌
ビッグコミック
ビッグコミックオリジナル
ビッグコミックスペリオール
ビッグコミックスピリッツ
応募総数:76作
2次審査通過:15作
3次審査通過:8作
大賞 賞金200万円
[In The Raw] 蓼然ん候(たでさんぞうろう) 26歳・滋賀県

STORY
事なかれ主義で日々漠然と生きる薬品研究職・伊勢平(いせひら)は、褒賞金300 万円につられ“ 昏睡事件” の調査に向かう。見事、“ 昏睡の原因” に遭遇するが、それは予想だにしないモノで…
■浅野いにお氏■
物語は弱い印象でしたが、それでも最後まで読ませる画面作りの圧倒的なセンスを感じました。安定した絵柄で、キャラクターは現代的でした。この実力に、魅せゴマやダイナミックな物語が加われば大きく化けるような気がします。
■石塚真一氏■
キャラクターが抜群に良いですね。感情表現が大げさじゃなく、愛嬌に包まれています。絵も上手いですね。見ているだけで楽しい絵で、ペンタッチから愛情を感じます。テーマさえ決まればどんどん描ける作者だと思います。
■太田垣康男氏■
キャラクターの絵柄は親しみ易く、日常の細やかな芝居も巧い。足りないのはキャラの魅力を引き立てる物語とアクション。セリフでコマを埋め尽くすのではなく、アクションシーンでコマを満たしてはどうだろう。絵柄とマッチして映える気がする。
■業田良家氏■
題材やセリフから作者の知性が伝わってきた。絵も大好きだ。登場人物は皆、キャラが立っているので複雑な設定も頭に入ってくる。しかし、物語全体をまとめるアイデアに欠け、キャラの魅力を活かしきれていないのが惜しかった。
■こざき亜衣氏■
絵が上手くキャッチーで読後感が良い一方、画面構成に単調な部分がありました。大ゴマ、寄り、引きのバランス調整やコマの統合の余地はあると思います。愛嬌のあるキャラを作れる方だと思うので、もう一歩人物・ネーム共に作り込んでほしいです。
入選 賞金50万円
[飲みたい] 岩佐一光 25歳・滋賀県

STORY
高校に入って初めてのマラソン大会の途中、ものすごく喉が渇いてしまった柴田(しばた) 。偶然拾った500円玉で、同級生の山田(やまだ)と一緒に飲み物を手に入れようとするのだが…?
■石塚真一氏■
面白い!良い!これはこの作者の持つ天性ですね。テンポが良いし、キャラクター達の顔がとにかく良い。楽しい気持ちで描かれているのが伝わってきました。次の作品が読みたいなあ~。
■太田垣康男氏■
ニヤリとする場面や台詞、脱力した雰囲気も相まってとても読み易かった。自販機というお題ひとつで漫画を作れるセンスは週刊連載で武器になる。キャラクターの芝居にもう少し個性が出れば即戦力!
■こざき亜衣氏■
めちゃくちゃ面白くて爆笑しながら読みました。落語のような軽妙なテンポ、その上、絵も上手い。単行本が出たら買わせていただきますね!
佳作 賞金30万円
[陰影] 本家 18歳・大阪府

STORY
大半の人間が超能力を有する世界で、ただ一人だけ能力を持たない少年・太郎(たろう)。高校生になった太郎は能力がある人の邪魔にならないように、大人しく暮らしていたが―?
■石塚真一氏■
実にリアルな感情が伝わってくる作品です。一人の人間の内面を描くことで、いまの社会の現状が見えてくるような感覚を持ちました。この作品で救われる心が沢山ある気がします。
■太田垣康男氏■
次の瞬間には何か大切な物が崩壊する、そんな不安感でページをめくるのが怖くなる作品。画面から溢れる負のオーラには圧倒される。この作家性には間違いなく一定のニーズがあるので歩みを止めず前進を続けて欲しい。
佳作 賞金30万円
[ジンセエゲーム] 森本大百科 40歳・大阪府

STORY
芸歴13年、売れない芸人の三波(みなみ)。ずっと芽が出ず、もう芸人はやめようと決意して同棲中の彼女に伝えたが、尊敬する先輩の片山(かたやま)から呼び出されて向かった先で!?
■石塚真一氏■
カッケー!!「人間バンザイ!!」と声に出したくなる作品で、実に気持ち良い。日常なのに、主人公が荒野を駆ける戦士のように見える。これは漫画の醍醐味だし、この作者の人間愛から勇気をもらう読者は多いと思います。
■こざき亜衣氏■
主人公が何を選ぶのかがちゃんと気になって最後までページをめくらされました。キャラクターが立っている証拠だと思います。一方、この内容ならばサブキャラクターたちにも血肉が欲しいです。見開きアップの表情がとても魅力的でした。
佳作 賞金30万円
[Where I Belong] 川澄圭 30歳・東京都

STORY
「あの頃 私たちは 二人でいれば 他はどうでもよかった」年の瀬、帰省の途を辿っていた会社員の梓(あずさ)は、突然背後から殴打される。目を覚ますとそこは…
■浅野いにお氏■
自然な友情物語で読後感も良かったですが、友人と再び打ち解ける過程では心境の変化をもっと明確に表現して欲しかったです。キャラの表情が良いので、セリフに頼らないシンプルな見せ方でも読者は満足してくれると思います。
■業田良家氏■
青春時代のまま、ずっとかわらない純粋な心と情熱を持っていたい。そんな感情を思い出しました。中学や高校の頃に好きになったもの、特に音楽は一生の宝物ですね。それをうまく表現している。
審査員総評
浅野いにお氏
全体的にレベルが高く、個性がしっかりある作品が多かったように思います。あとはその個性が最大効果を発揮できるよう、起承転結等の漫画作りの定石はしっかり守りましょう。一方で優等生的な作品も多かった印象です。せっかく漫画新人賞というある意味で古き良き表現の場なので、もっと危険な作品があってもいいんじゃないかと思っている自分がいることを思い知りました。新人の皆さん、ここはもっともっと自由でいいんですよ。
石塚真一氏
現代を生きてる人々の感情にフォーカスした作品が多かった。それだけ現実社会が呑気でいられない、一筋縄ではいかないことの現れなのでしょう。生きていく方向、感情の保ち方が難しい時代にこそ、その時代の主人公が必要だと思います。新人のみなさんならば描けると思います。時代の主人公!!
太田垣康男氏
今回はどの作品も絵が上手く画力の点ではプロレベル。だが、物語が及第点に達している作品は無かった。不安や不満を抱えた主人公が気持ちを表明する、だけでは不十分。ここから主人公がどんな行動を取るかが見せ場なのに、そのクライマックスが無いまま終わっては肩透かしだ。そもそも「周りから評価されない」程度の事はピンチではないので物語のスタートラインにも立っていない。絵の練習と同じだけストーリー作りも基礎から練習して欲しいと切に願う。
業田良家氏
今回も絵のレベルが高い。構図やコマ割りもそれぞれに工夫があって面白い。ストーリーもちゃんと伝わるように作られている。この中からプロデビューする人も出るだろう。頑張ってください。
こざき亜衣氏
「キャラが立っている」とは一体なんだろうなぁ、どうやって説明すればいいんだろうなぁと、いつも悩みます。私自身まだハッキリわかっていないのだと思います。家族や友人に、その人の知らない人物の話をついつい熱心に語ってしまう瞬間に秘訣が隠れていそうな気がします。審査員の言うセリフではないかもしれませんが、今回もたくさん勉強させていただきました。

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