

第95回新人コミック大賞(青年部門)に、たくさんのご応募ありがとうございました!!厳正な審査の結果、大賞1作、入選2作、佳作3作が選ばれました。
受賞者の皆様おめでとうございます!!
該当誌
ビッグコミック
ビッグコミックオリジナル
ビッグコミックスペリオール
ビッグコミックスピリッツ
応募総数:67作
2次審査通過:15作
3次審査通過:8作
大賞 賞金200万円
[ランドリー] 市井市蔵 27歳・長野県
STORY
付き合っている彼との新生活に向けて、新しい洗濯機を買った沙菜。しかしその矢先に彼と別れてしまい、ひとり暮らしの家に大きな洗濯機だけが残ってしまう。そんなある日、別れた彼が沙菜の家を訪ねてきて…。
■浅野いにお氏■
簡潔にまとまっていて、リアリティーのあるストーリーが好きでした。一方、台詞が説明過多かつ一般的な内容なのが気になりました。次は言葉のチョイスにこだわってオリジナリティを出してみてください。
■石塚真一氏■
良い作品だなあ…泣けました。面白いを超えて、読み手の背中を押してくれるような物語を描けるのはこの作者の強みです。一話読んだだけでほんの少し世界が違って見えるような作品。もっともっと読みたいなあ~…
■太田垣康男氏■
とても惜しい作品。別れた彼氏との思い出を回想する場面で、彼の人間性に好感を持てる印象的な場面がひとつあれば、読後感は大きく変わっていたと思う。彼を好きになって良かったと思う場面が何かあるはず…!
■業田良家氏■
素晴らしい!短編の読切漫画として傑作だと思います。洗濯機が持つ具体的な機能と抽象的な意味合いを巧く比喩として使い、その上タイムマシンにまでしてしまう。見事としか言いようがない。ラストのお金が返ってくるところも最高に巧い。
■こざき亜衣氏■
前作『しえん』もそうでしたが、人の内面がパッと変わる瞬間が描けるのはこの作家さんの強みだと思います。画力も高いです。なので次はぜひ"エンタメ"としての漫画にその強みを落とし込んでみて欲しいです。
入選 賞金50万円
[ナインティーンナインティナイン] ユナン 24歳・東京都
STORY
1999年。とある高校に通う3年生の男子3人が屋上に集まった。手にした“招待状”には、「修学旅行を楽しく過ごすため、トラブルを起こすメンバーを募集します」の文字が―
■浅野いにお氏■
閉塞的な世界観でキャラクターたちは諦念しつつも、どこか熱がこもった非常に生々しい描写に才能を感じました。特にラストのモノローグは出色の出来でした。コマ割りや台詞の位置は改善の余地があるように思います。
■太田垣康男氏■
今回の応募作では一番の画力。人物造形や表情にも説得力があり暗い情念と不安定な心が伝わって来る。それ故にシナリオの未熟さと演出の分かり難さが勿体無い。この作者が脚本の力を磨いたら…将来が楽しみだ。
■業田良家氏■
描線が力強く、動きも表現力もある。物語にも緊迫感があり先が気になりながら読んだ。しかし、なぜ「1999年」の設定にしたのかがわからなかった。それを推察する楽しみもあるが、ヒントが少ない。その辺の匙加減を再考してほしい。
入選 賞金50万円
[夜一つ越えただけ] 守口リョウ 24歳・静岡県
STORY
フリーターになって3年、漫画喫茶でバイトする浜崎は、年下の同僚・チカが気になる。チカには自分と同じような、幸せになれなさを感じるからだ。そんなある日、バイト先の飲み会で…!?
■浅野いにお氏■
こなれた絵柄・大胆かつ適切なコマ運びが印象的な、現代的で良い漫画でした。キャラも生き生きしていて、納得感があります。一方、根本的な問題が物語の中で解決していないので、そこを描けるとより良い作品になったと思います。
■石塚真一氏■
市井の人々の感情をしっかり捉えた力作だと思いました。漫画のキャラにとどまらない「人間」を描ける作者だと思います。この作品に救われる読者の心が必ず存在すると思います。次の作品を楽しみにしています。
■こざき亜衣氏■
読後感がとてもよく、特に見開きが素敵でした。ただ、せっかく一見共通点のない二人の友情を描くのだから、"違い"と"共通点"を明確にして、反目と共感の化学変化が見たかったです。
佳作 賞金30万円
[片隅に生きる君へ] むつさとし 28歳・東京都
STORY
文芸編集者の平野は、新人作家の作品の中に自身と友人たちの名前を見つけた。昔馴染みが執筆したものと思い、同級生たちに探りを入れる平野だったが、事態は予想外の展開に…!?
■石塚真一氏■
作者の人間愛を感じる作品です。手の届く人間関係の大切さを教えてもらった気がします。絵は実にスッキリしていて、その分キャラの感情が浮き彫りになっています。次作を楽しみにしています。
■太田垣康男氏■
優れたシナリオの秀作。台詞から伝わるキャラクターの人柄やリズム感、深みのある物語はとても良かった。惜しむらくは絵が単調で人物も表情が乏しい。だが、ネーム原作者になればきっと大化けすると思う。
佳作 賞金30万円
[キンモクセイ] ※『金木犀』より改題 子硯 29歳・東京都
STORY
高校生の栞は試験の多い日々にちょっと疲れ気味。ある日、友人の真里から誘われて秘密基地だという屋上に忍び込む。夜の屋上は、栞の知らない世界が広がっていて…
■業田良家氏■
過ぎ去って二度と戻ってこない、かけがえのない瞬間を何かの匂いと共に思い出す。切なさが伝わってきました。絵柄も可愛くて描線も美しい。多くの人に愛される絵ですね。
■こざき亜衣氏■
視覚以外の感覚を漫画で扱うのはとても難しいのですが、恐らく誰でも知っている金木犀の香りを持ってきたのはいいアイデアでした。一方、内容は会話やモノローグ頼みの箇所が多いため、展開や絵を頑張ってみてほしいです。
佳作 賞金30万円
[クライクレイクレイジー] 依和尾阿弥 26歳・埼玉県
STORY
成績優秀、学校一絵が上手い女子高生 希望。天から二物を与えられた少女の生活が、友人に向けたとある一言で、一変していく。
■石塚真一氏■
テーマが作者の中でしっかりとしているので、とても読みやすかった。キャラクター達の描き分けも上手で、表情と性格がピタっと一致しています。人と人との関係性のドラマに期待大です。
■こざき亜衣氏■
創作に対して素直で真摯な姿勢がよいですね。負の感情もユーモラスに描いているのが印象的でした。テンポが良く読みやすいのですが、メリハリに欠けるのが残念でした。次は読者を楽しませる漫画を考えてみてほしいです。
審査員総評
浅野いにお氏
全体的に爆発力はないものの、優等生な作品群という印象でした。安心感・説得力はありつつも、他方で物足りなさもあります。安心=面白さではないのです。今回は友達をテーマにした作品が多かったですが、そのテーマをもっと分析・批評して個性を発揮してほしかったです。アイデアは一段掘り下げて推敲する癖を身につけると、自身の作品の面白さや見せどころが明確になると思います。
石塚真一氏
大切な人生の時間を投じて1本の作品を仕上げました。それって凄いことですよね。どうか、ご自身を讃えてあげてください。さて、次の作品です。また自分を鼓舞しなくてはなりません。日々の生活がある中で漫画制作と向き合うのは気力がいります。「頑張ってください」としか言いようがないのが辛いですが、どうか、ファイトで次作を!! 皆さんの作品を読んだ誰かの心が一瞬でも救われることって必ずあると思います。
太田垣康男氏
漫画家を目指す今の新人作家はどこで技術を学ぶのだろう?漫画家に必要な技術は画力だけでは無い。脚本、演出、構成、演技、構図etc.応募作の多くはそれらを知らずに独学で描いている。編集者は漫画を読むプロだが描くプロではないから教えられないし、アシスタントで学ぶ道も激減、専門学校の多くは初心者向け。新人賞を突破するレベルの若者達に漫画の技術を伝える新たな「学びの場」が必要だ。それを是非出版社は模索して欲しい。
業田良家氏
今回は人の心の持つ切なさや悲しさ、さらに絶望感まで伝えてくる作品が多かった。どんなに絶望してもいいけど、それを乗り越えたり、壊したり、ひっくり返したり、大笑いするような作者のパワーと情熱を見せてほしい。それが漫画を含めて「表現者」のあるべき姿だと思うのです。極端な言い方かもしれませんが。
こざき亜衣氏
どの作品にも光るものがありつつも惜しいところもありで、難しい審査でした。全体的に内向的な印象も受けました。人を惹きつける作品というのは作為的な物語ではなく、デカい声では言えないようなことを聞いてもらうための漫画だったりします。問題は、そうとは悟らせずに大いに気持ちよく自分語りをするにはどうしたらいいかを考えることです。多くの人に聞いてほしいなら客観性とテクニックが必要で、それが商業誌でやっていく条件です。

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