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第97回新人コミック大賞（青年部門）に、たくさんのご応募ありがとうございました!!厳正な審査の結果、大賞1作、入選2作、佳作3作が選ばれました。
受賞者の皆様おめでとうございます!!
該当誌・媒体
ビッグコミック
ビッグコミックオリジナル
ビッグコミックスペリオール
ビッグコミックスピリッツ
ビッコミ
応募総数：86作
2次審査通過：18作
3次審査通過：9作
大賞 賞金200万円
[つるの恩返し] 四宮知る 東京都
STORY
ある日、通勤中に鶴を助けた会社員・箱根（はこね）。
そして自宅に帰ると、美しい女性が「今晩泊めてほしい」と訪ねてきた…「鶴の恩返し」と同じ展開に、彼女が鶴だと確信し、この機会を逃すまいと物語を辿ろうとするが…!?
■ 浅野いにお氏 ■
ひたすらに理詰めにされる主人公は読んでいて楽しかったです。「自己肯定感が低いが傲慢」こんな言葉をかけられたら立ち直れません。主人公の魅力のなさに相反して女性陣2人は非常に魅力的でした。
■ 石塚真一氏 ■
面白い！！会話のテンポも話の展開も少しヒキでとらえて描いてるところに味がある。人物の表情も微妙で人間らしい愛嬌に満ちています。話題作を描きそう。
■ 太田垣康男氏 ■
自然な台詞回しが非常に上手く、画力が高いのでキャラクターの演技も実に的確。寓話を使った物語も上手く定番を外しつつ、綺麗にオチを着ける点も実に上手い。総合的に技術力の高い作品。
■ 業田良家氏 ■
鶴を助けているシーンを見ただけで笑ってしまった。現代版「鶴の恩返し」だとすぐに分かり、どうなるのかとワクワクしながら読み進むことができた。テーマやメッセージも正に現代を表現していて昔話を上手に生き返らせている。
■ こざき亜衣氏 ■
ギャグセンスが素晴らしい！ あまりにも間がいいのでギャグ漫画かと思って読み進めていたら、意外と真面目なテーマを通って最後いい感じにポジティブに着地したのがお見事。画力の高さもギャグを邪魔することなくマッチしていた。
入選 賞金50万円
[スメルズ ライク ティーン スピリット] おくやままるか 22歳・神奈川県
STORY
学校生活に退屈を感じている高校3年の経堂（きょうどう）。
ある春の日、彼女のことを「ずっと見ていて好きだ」とセーラー服姿の2年生・成増（なります）に告白される。彼に興味を持った経堂はふたりだけの“ 秘密の時間”を重ね始めるが⁉
■ 浅野いにお氏 ■
淡い恋心を瑞々しいタッチで表現した好みの作品。空気感は最高。単純なエロではなく、行き場のない感情の切なさのような表現になっているので爽やかさを感じた。脇目も振らずその道を極めて欲しい。
■ 業田良家氏 ■
私には一度も経験したことがない感情を表現されているようで理解不能だった。それでも言葉にできない何かが私に伝わってきて不思議だった。エロ表現も魅力的だった。特殊な才能を感じた。
■ こざき亜衣氏 ■
独特で美しい描線と詩的な台詞回しがマッチしていて、得難い個性を持った作家さんだと思いました。性描写もいやらしく仕上がっており（褒めてます）、嫉妬しました。偉大なタイトルですが、名前負けしない作品でした。
入選 賞金50万円
[ラスト・ア・ライブ] スガノヨシカ 24歳・佐賀県
STORY
人魚化手術を受ければ不老不死になれるようになった世界。ほとんどの人が人魚化するなか、即（すなわち）と、同じクラスの一色（いっしき）さんは人間のまま生きていた。しかし、人魚化を勧める周囲の圧力が強まり…
■石塚真一氏 ■
テーマがビシッと伝わる物語です。設定した舞台に説得力のある絵も良い。作者本人のロマンと遊び心も盛り込まれていました。
■ 業田良家氏 ■
「永遠」や「不老不死」に対する疑念がテーマというのがいいな。それを陸上と海中に、人間と人魚に対比させて上手にセンス良く表現している。絵にも個性があって良質な才能を感じた。
■ こざき亜衣氏 ■
独特な透明感を持った良い絵を描かれる作家さん。構図やライティングも考えられていて、物語に没入することができた。恋愛を介さず人と人が強く結びつく物語は時代性も感じ、個人的に好きな話でした。
佳作 賞金30万円
[愛が咲いたら] 犬ノ畝のぼる・東京都
STORY
「私はお姫さまにはなれない」。絵画教室で働く根住（ねずみ）は、かつて抱いていた夢とは程遠い生活を送っていた。そんなある日、根住にとって因縁の相手が絵画教室に現れて……
■ 太田垣康男氏 ■
登場人物の振る舞いがとても清廉で、とても優しい物語をしっかりと描き上げてる事に静かな喜びを感じた。作者の人柄は美しい。ラストカット、壁に犬の絵が飾ってあるのも実に良い。
■ こざき亜衣氏 ■
2人がどうなっていくのかが気になって最後まで手が止まることなく楽しめた。王子様を待つ主人公がリードされ続けていたので、最後はもう一歩踏み込んだ成長が見たかった。
佳作 賞金30万円
[ホモサピエンス] 大葉子ひな 24歳・東京都
STORY
1億2000年後の地球では生態系の頂点に「昆虫」が君臨していた。カブトムシの「モディスキー」は、父親から「ホモサピエンス」をプレゼントされ、飼育・観察を始めるが…⁉
■ 浅野いにお氏 ■
表情のない昆虫でもちゃんとセリフなしで感情が伝わってくる不思議な漫画体験でした。なかなか難しいコンセプトの漫画を描き切ったことを評価したいです。
■ 太田垣康男氏 ■
挑戦的な題材にも関わらず、表情のないカブトムシの心情の変化を描き、幼児の生態と愛らしさも表現されていて興味深く読んだ。脱走の場面は爽快感があり、心の繋がりを垣間見た2人のラストも切なくて良い。
佳作 賞金30万円
[ランニングテスト] 西腹 24歳・岡山県
STORY
まりは走る。全速力で、走って走って逃げる―――
同棲中の彼氏のクッキーを勝手に食べ、指摘された まり。なぜだかそれが頭にきて、家を飛び出してしまい…!? 愛とユーモアの疾走劇。
■石塚真一氏■
感動のラブスペクタクルです。オールアクション、一瞬に感じる程面白かった。楽しいのでもっともっと描いてください！
■業田良家氏■
恋人同士のお互いの心の機微や駆け引きを、ずっと走って追いかけているという状況の中だけで表現している点がすごく新鮮に感じた。オチの付け方もお見事。
審査員総評
浅野いにお氏
それぞれ持ち味を自覚して作られていて、作画以外は言うことがなかった。ストーリーも雰囲気を味わうものが多かったので、今後は読者へ正確にプロモーションできるかが課題になる。ただ、ポピュラリティを持った作品が見当たらなかったのも正直な感想。娯楽の多様化から、読者の母数は今後必ず減る。定期的に大ヒット作品は現れるが、誰もその法則はわかっていない。作家性を貫くか、貪欲にヒットを狙っていくか、舵取りはご自身で判断を。
石塚真一氏
まずはひとつの作品を完成させた自分を讃えましょう！ここからは「描く人は描く」し「描かない人は描かない」のが現実で、どうやって「描く自分」に持っていくか？ここが難しいなって思います。漫画を描くのが仕事？遊び？戦い？癒やし？逃避？みんなバラバラです。今回も楽しい作品がいくつもあったので、ぜひとも次作に挑んで欲しいと僕は思っています。ありきたりな言葉ですが、、、、ファイト !!
太田垣康男氏
今回は「作者の人柄の良さ」を感じる良作揃いだった。作者の人柄は写し鏡の様に主人公の態度と言動に現れるし、周りのキャラクター達もやはり作者の分身、描く世界も作者の見て来た日常から描写される。優しい物語は優しい作者から生まれる。しかし、皮肉な事に優しい作者は悪役を描くのが苦手だ。主人公を追い詰め、困らせる苦境も。可哀相に思ってつい手加減してしまう。新人賞を突破した次の壁は自分の中の悪と向き合う事。健闘を祈る。
業田良家氏
今回は特に素晴らしい作品が多くて5点満点を3つも付けることとなった。若い人達の新しい才能がいくつも芽吹いている。審査していて楽しかったです。
こざき亜衣氏
候補作すべてとても楽しく拝読しました。総じてレベルが高く、点数をつけるのが難しかったです。新人漫画賞の作品は私的な面が強く出やすい分、今の時代が抱える切実さが見えてくるような気がします。ここでしか味わえない特有の空気感は、とても貴重な文化資産であるように思います。
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